1.出会い

私は生まれて間もない柴犬。名前はナナ。

クリスマスにとある4人家族と出会いました。

お姉ちゃん、お兄ちゃん、お父さん、お母さんと、私を変わるがわる抱っこしてくれました。

「小さくて可愛い〜ね!」

「ナナ、ナナ、こっちだよ!おいでおいで!」

ふわふわであったかい感触に子ども達は大はしゃぎ。

この日から、4人と1匹の暖かく幸せな時間が始まりました。

2.成長 子供達 遊び

一緒に遊んで食べてまったりして・・・

笑って泣いての家族との出来事はたくさんの思い出ばかり。

いろんなところを散歩して、ボール遊びしたり、

お姉ちゃんやお兄ちゃんとはジョギングをしながら猛ダッシュ!

キャンプにも行ったなぁ。

ときに脱走してしまって迷惑をかけたこともありました。

ちょっと1人の冒険もしてみたかったのです。

ひとっ走りして気が済んで家に帰ると、ご飯とお水、おやつもたくさん用意してあって、ちゃんと私が帰ってくるのを待っていてくれました。

心配かけてごめんなさい。

3.ナナと飼い主の絆と成長

出会いから5年。私はすっかり立派な大人の柴犬です。

「もうナナの方が年上だもんね。あのさ、聞いてくれる?・・・」

この時お姉ちゃんは高校生。

学校であったこと、部活のこと、友達のこと。いろんな悩み事があったようです。

私は耳をピント立てて静かに聞き、クンクンとうなずくことしかできませんでしたが、

ひと通り話し終えたお姉ちゃんの顔はスッキリしたように見えました。

よかった。 よかった。

4.老いと介護

それからまた時は流れ、子ども達は社会へ旅立ち、家にはお父さんとお母さんだけになってしまって なんだか少し寂しいな。

その頃の私はというと、体の毛の色も薄くなり、目も少しかすみがかって

いつの間にかおばあちゃんになっていました。

ある冬の暖かい日、うずくまって動けなくなっていた私に お父さん、お母さんが気づきました。  「ナナの様子がおかしい」

その日から私は普段通りに歩けなくなってしまったのです。

足腰が弱まるスピードは速く、寝て過ごす時間が多くなりました。

自分でトイレもできなくなって、ついにオムツのお世話になることに。

オムツなんて履き慣れていないものですから、食いちぎって大暴れしたこともありました。

私だって歳はとりたくないけれど、人間と同じく老いには犬も勝てません。

昔は走って遊んでいることが楽しくて仕方ない毎日だったけど、

今は、お父さんお母さんに抱っこされて日光浴している時間が、何より至福のひと時です。

5.愛と感謝の中での別れ

そして動物病院に行ったり、お母さんに食べやすいご飯を作ってもらったり・・・。

介護してもらって数年経ったある日、急に食が細くなり、ご飯が食べられなくなりました。 

そんなわたしの様子を心配したお姉ちゃんが、ある晩電話をかけてきました。

「ナナッ! ナナッ!」

電話越しにお姉ちゃんがわたしに声をかけます。

それはとてもとても懐かしい声でした。たくさんおしゃべりしていたあの頃がよみがえってきて、また散歩に行ける気がしてきました。

わたしは家族と過ごした幸せな時間を思い出していました。

みんなに出会えてよかったなぁ。

そう思った時、目から一粒、また二粒と涙が流れ落ちました。

声は出ないけど私なりの精一杯の「ありがとう」を伝えたかった・・・

感謝の気持ち届いたかなぁ。届くといいなぁ。

それから数時間後、お母さんに手を握られ安心した私は、ゆっくり目を閉じ静かに次の世界へと旅立ちました。

6.孤独と希望

ふと目覚めた私の体は、不思議なことに空に浮き上がっていました。

そして元気だった頃のように駆け回ることができたのです。

新たな旅の始まりに嬉しくなって空に向かって走り出しました。

しばらくすると、黒い雲がわき起こり大粒の雨が降りだしてきました。

目も開けていられないほどの大雨です。

こんな時、誰か一緒にいてくれたらな。

生きていた頃こんな天気の日には家族がそばにいてくれたのにな。

周りには誰もいない。

ひとりぼっちは寂しい。

みんなどこにいるんだろう。会いたいな・・・

悲しすぎて走るのをやめようと思っていたその時、

雲の隙間から一際きらりと光っている星を見つけました。

「きっと、あそこに行けば・・・」

わたしは降りしきる雨の中、星空に向かって必死に駆け上がりました。

そうして黒い雲を抜けた先にあったのは、空いっぱいに輝く天の川の星たちでした。

7.虹の橋の先に広がる未知の世界

無数の星たちが辺りを照らしまばゆい光を放っています。

ふと見ると、先ほどの雨の粒が光に反射して大きな虹の橋になっていました。

「あの先には何があるんだろう」

私は思い切って橋を渡ってみることにしました。

8.虹の橋を渡ることで出会う懐かしさと新しい発見

登り切った橋の真上から見下ろすと

そこには緑生い茂る木々や色とりどりの花々が広がって見えます。

クン クン!  昔懐かしい匂いがしました。

「なんだか楽しそうな場所だな」

私は虹の下に降りてみることにしました。

9.再会と永遠の絆

広々としたお花畑。

そこを抜けると、気持ち良い風がさっきまで胸の奥にあった不安や悲しみも消していってくれました。

草花をかき分け進んでいくと、たくさんの動物や人々が楽しく集まって遊んでいます。私は時間も忘れてたわむれ過ごしていました。

どれくらいの月日が経っていたのでしょう・・・

そんな時です。「ナナッ! ナナッ!」

聞き覚えのある声が私の名前を呼んだのです。

声の主は小さい頃から一緒だった大好きなお姉ちゃん、そして家族みんな揃っていました。

「ナナ また会えたね」

私たちはぎゅっと抱きしめ合いました。

時を超えて、私はまた大好きな家族と再会することができたのです。

私は、ひとりぼっちなんかじゃなかった。

人も草木も動物も みんながみんなを大切に思い合える 優しい世界があるんだよって、虹の橋が教えてくれました。

出会いがあれば別れもある。

嬉しいことがあれば悲しいこともある。

でも大丈夫!

いつか、いつか、きっとめぐり会えるから…大丈夫。

またね。 

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